PR

主治医の交代とどう向き合う?難病当事者が感じた「引き継ぎの難しさ」と、自分にできること

主治医の交代とどう向き合う?難病当事者が感じた「引き継ぎの難しさ」と、自分にできること - のアイキャッチ画像 療養の工夫・ノート

私は家族性地中海熱(FMF)という指定難病の当事者ですが、難病のように「長く向き合っていく病気」で通院をしていると、人事異動や退職などの理由で主治医が変わってしまうことは避けられません。

私自身もこれまで何度か主治医が変わった経験があり、そのたびに少し複雑な気持ちになることや、情報の引き継ぎが上手くいっていないことへのストレスを感じたことがありました。

今回は「主治医が変わってしまうこと」について、私の実体験を交えながら、「構造上の問題」「病気と長く向き合っていくための考え方」などを書いてみたいと思います。

※本記事は筆者の実体験と一般的な情報をもとに執筆したものです。症状や治療については医療機関にご相談ください。

主治医が変わるのは、長く向き合う病気の「宿命」

そもそも難病とはどんな病気のことを指しているのか、改めて整理します。

厚労省「難病の定義」の図解

厚生労働省の要件によると、

  • 原因不明
    →発病の機構(原因)が明らかになっていない
  • 治療法未確立
    →有効な治療方法が確立されていない
  • 希少性
    →希少な疾病である
  • 長期療養
    →長期にわたる療養を必要とする

という4つの項目が挙げられています。

このように、難病とは「完治が難しく、長期にわたり治療が必要な病気」であるため、数年、時には数十年にわたり向き合っていくことになります。

一方で、先生にもそれぞれのキャリアがあり、異動や転勤、開業、退職などのタイミングで主治医が変わってしまうことがあります。

「ずっと同じ先生に診てもらいたい」という気持ちは当然ありますが、患者である自分の病気が長く続く以上、その途中で主治医が変わってしまうのは仕方のないことだと思っていますし、それを完全に避けることは難しいというのが現実です。

参考リンク:
厚生労働省「指定難病の要件について(PDF)」 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001629399.pdf

引き継がれるたびに、情報が薄まっていく不安

主治医が変わること自体は仕方がないと割り切れても、一つだけ気になっていることがあります。

それは、引き継ぎが繰り返されるうちに、伝言ゲームのように「自分の状態に関する情報が少しずつ薄まってしまうのではないか、正しく伝わらないのではないか」ということです。

伝言ゲームでだんだん情報が薄まっていくイメージ画像

例えば、発症当初の「かなり辛く、苦しそうな状態」や、「薬の調整で少しずつ症状が軽くなってきた状態」を実際に知っている最初の先生と、何度かの引き継ぎを経て「薬で安定し、定期通院しているだけの状態」しか見ていない5人目の先生とでは、同じ病状であっても受け取る印象や評価が変わってしまう可能性があると感じています。

カルテや検査データという記録は残っていても、「実際にどんな状態だったか、どういう経過で今の状態になったか」というのは、文字だけでは伝わりきらないのかもしれません。

また、同じ病院に長く通院していたとしても、通院期間が長くなればなるほどカルテの情報量(定期検査の結果など)は増えていき、新しい先生が発症当時の情報まで遡って経過を把握することが徐々に難しくなってしまうことが考えられます。

「発作はいつから消失していますか?」と聞かれた日

これは今年(2026年)の4月、私が実際に体験したエピソードです。

これまで約2年間にわたり私のことを診てくれていた主治医が異動することになり、同じ病院内で新しい先生に診ていただくことになったのですが、情報の引き継ぎがうまくいっていなかったと感じた出来事がありました。

新しい先生の初回診察で、これまでの検査結果や前の先生からの引き継ぎ事項を確認しているはずの状態で、「発作が消失してどれぐらい経つんですか?」と聞かれたのです。

しかし実際には、発作が消失したことは一度もなく、発症当初からほぼ同じ周期で、今も発作を繰り返しています。そしてそのことは、2ヶ月に一度の定期通院のたびに毎回報告していた内容でした。

それが正しく引き継がれていなかったために、現在の状態について1から説明し直す必要がありました。

  • 発症当時の発作の症状
  • これまでに実施した検査
  • 薬の調整過程
  • 現在の発作の症状や生活の状態
  • 医療費助成の利用状況

などを口頭で伝えることになり、

「同じ病院に何年も通院していて、検査結果や状態はカルテに全て残っているはずなのに、なぜ最初から説明し直さないといけないのだろう」と、少し複雑な気持ちでした。

心配になるのは、公的制度の診断書への影響

こうした「情報の薄まり」が起きると、心配になるのが診断書などの評価です。

医療費助成や障害年金といった公的制度を利用する際には、医師が作成する診断書の内容が重要な判断材料になるとされています。

もし、実際の発作の頻度や辛さよりも軽い状態として医師に伝わってしまっていたとしたら、その印象のまま診断書が作成され、実際の状態より軽く評価されてしまう可能性もあるのではないか、という不安を感じることがあります。


私が現在取得しているのは「特定医療費(指定難病)受給者証」のみですが、これは一年ごとの更新が必要で、その度に「臨床調査個人票」という診断書のような書類を書いてもらうことになります。

家族性地中海熱の臨床調査個人票
実際の臨床調査個人票の写真

取得してからこれまでに何度か更新手続きを行いましたが、認定が取り消しになったり、実際に何か不利益を経験したことは今のところありません。

しかし、ちょうど更新のタイミングで主治医が変わったり、病気と長く向き合っていくなかで別の制度を利用することになった場合など、「自分の状態を正しく書いてもらえなかったらどうしよう」という不安は常にあります。

それでも、先生たちの事情もよく分かる

ここまで心配な点を書きましたが、先生側の立場も十分に理解できます。

一人の先生が、限られた診察時間の中でたくさんの患者を並行して診ているわけですから、一人ひとりの細かい状況や経過を100%正確に把握し続けることは、現実的にかなり難しいことだと思います。

また、たとえカルテの記載や検査データがあったとしても、一人の患者のこれまでの経過を完全に把握し、前回の続きから話を再開するというのは、構造的にも限界があるのだろうと感じています。

これは特定の先生や病院を責めるという話ではなく、「長く続く病気を、複数の医師で引き継ぎながら診ていく」という仕組み自体が抱える難しさなのだと思います。

「自分の状態を自分で説明できる」ようになる

そう考えると、自分にできることは「先生に丸投げしない」という姿勢を持つことなのだと思っています。

例えば、

  • 自分の検査結果(CRPやSAAの値、白血球数など)の推移をある程度自分でも把握しておく
  • 発作の頻度や症状について、自分の言葉で、時系列で整理して説明できるようにしておく
  • 自分の病気について勉強し、基本的な知識を持っておく

といったことを、日々少しずつ積み重ねておくことが大切だと感じています。

「自分の状態を一番よく知っているのは自分」という意識を持っておくと、たとえ先生が変わっても、病院が変わっても、引き継ぎの精度にばらつきがあったとしても、自分自身でその差を埋められるのではないかと思っています。

おわりに

主治医が変わることは、長く付き合う病気とともに生きていく以上、これからも何度か経験することだと思います。

そのたびに「また説明し直さないといけないのか」と少し気が重くなってしまいますが、日ごろから「私のことを100%説明できるのは私しかいないんだ」という意識で療養生活を過ごすことで、情報の引き継ぎや説明を他者に依存しない状態を作れると感じています。

主治医が変わることになり不安に思っている方や、情報の引き継ぎが上手くいかずモヤモヤしている方にとって、何か参考になる部分があれば幸いです。

※本記事は筆者の実体験と一般的な情報をもとに執筆したもので、特定の医師または医療機関を否定する意図はありません。症状や治療については医療機関にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました