私は数十万人に一人の難病と診断されたとき、
「なぜ自分なのだろう…」
「なんてツイてないんだ…」
という感情が心にありました。
しかし、がんや障がい、心の病など、さまざまな病気や不調の割合を公的な統計で調べてみたところ、見えてきたのは「珍しい病気の当事者である自分」と「不調と無縁な大多数の人たち」という構図ではありませんでした。
この記事でまとめた内容から「みんな、何かと闘っているんだ」ということを実感し、少しでも気持ちが軽くなれば嬉しいです。
「なぜ私だけが」と思った
原因不明の発熱を繰り返していた時期、そして希少疾患(指定難病)という診断がついた後には、正直「なぜ自分が……」や「ツイてないなぁ……」という感情がありました。
周囲を見渡しても同じように難病と向き合っている人はなかなか見つからず、街ですれ違う人たちは皆、健康に日常を送っているように見えていました。
しかし、「辛さ」が目に見える形で表に出ている人もいれば、そうでない人もいます。
実際に私の病気(家族性地中海熱)も、発作がない時期は普通に生活ができ、見た目の変化もないため、一見して「難病患者」と判別することはできません。
今回いろいろな統計を調べてみて、「街ですれ違う元気そうな人も、実は不調を抱えて生活しているかもしれない」という当たり前のことを、改めて深く考えるきっかけになりました。

いろいろな数字を並べてみる
ここから見ていく数字は、それぞれ異なる調査機関・調査方法による数値で、前提が違うため単純に足し合わせることはできませんが、ひとつひとつを見ていくだけでも「病気や不調と無縁な状態」が実はそれほど当たり前ではないことが伝わってくるかと思います。
がんは、2人に1人
国立がん研究センターの集計によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性が61.1%、女性が50.1%とされています。(※2023年データに基づく推計)
性別を問わず、およそ2人に1人という割合です。
障害のある人は、10人に1人
内閣府がまとめている障害者白書によると、身体障害・知的障害の実態調査と、精神疾患で医療機関にかかっている人の数を組み合わせると、国民のおよそ9.3%が何らかの障害を有していると推計されています。(※令和7年版障害者白書)
およそ10人に1人という計算ですが、障害者手帳を持っていなくても、障害による生活のしづらさを抱えている人や、福祉サービスを利用している人もいます。
糖尿病は、疑いも含めると8人に1人
厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査によれば、糖尿病と診断されて治療を受けている人や、検査結果などから糖尿病が強く疑われる人を合わせると、20歳以上の約12.9%、およそ8人に1人に相当します。(男性17.7%、女性9.3%)
これとは別に、「糖尿病の可能性を否定できない者」も約700万人いると推計されており、両者を合わせるとさらに規模の大きい数字になります。
婦人科疾患は、女性の5人に1人
15〜59歳の一般女性516人を対象にしたバイエル薬品の調査では、月経困難症・過多月経・月経周期異常・子宮筋腫・子宮内膜症などの婦人科疾患にかかった経験がある女性は約2割、およそ5人に1人の割合です。
心の不調は、5人に1人
厚生労働省の検討会資料などで引用されている世界精神保健調査によると、日本における精神疾患の生涯有病率は22%前後と報告されています。
研究によって数値には幅がありますが、おおむね5人に1人が、生涯のうちに何らかの精神疾患を経験するとされています。
指定難病の受給者証を持つ人は、110人に1人
難病情報センターが公表している衛生行政報告例のデータでは、令和6年度末時点で、指定難病の医療受給者証を持つ人は全国で112万人あまり(1,121,462人)とされています。日本の総人口で割ると、およそ110人に1人という計算です。
ただしこれはあくまで受給者証を持つ人の数であり、まだ申請していない人や、診断そのものに至っていない人は含まれていません。
ちなみに同じ資料によると、私の病気(家族性地中海熱)の受給者証所持者数は令和6年度末で856人でした。
認知症は、高齢者の8人に1人
厚生労働省が採用している研究班の推計では、2022年時点で65歳以上の高齢者における認知症の有病率はおよそ12%(約443万人)とされています。そして年齢が上がるほどこの割合は大きくなり、85歳以上ではおよそ3割前後、90歳以上ではおよそ5割前後まで上昇するとの報告もあります。
認知症という診断名がつくかどうかは別としても、加齢にともなう心身の不調は、長く生きれば誰にでも訪れうるものだと言えます。

「今」ではなく「一生」というものさしで見てみる
ここまでに挙げた数字は、同じ人が複数の項目に当てはまることもあれば、どの項目にも当てはまらないまま生涯を終える人もいるため、単純な計算で「日本人の何%が」と結論づけることはできません。
ただ、こうして数字を並べてみると、「今、この瞬間に不調を抱えているかどうか」という点だけで見るのと、「生まれてから人生を終えるまでの間に、何らかの病気や障害、心身の不調と向き合うことがあるかどうか」という線で見るのとでは、かなり印象が変わってくるように感じます。
少なくとも、「病気や障害、不調などとまったく無縁のまま一生を終える人」の方が、実は少数派なのではないかと思えてきます。
見えにくい苦労も、たくさんある
前述の数字はいずれも公的な統計として発表されているものですが、実際には数字に表れにくい苦労もたくさんあります。
睡眠障害、不妊治療、事故などの後遺症、長引く腰痛や偏頭痛のような慢性的な痛み、診断名はつかないけれど生きづらさを感じる特性。
こうしたものは「病気」や「障害」という枠には収まりきらないことも多いため、統計上は見えづらい存在ですが、当事者にとっての大変さは難病や障害と並べても決して軽いものではないはずです。
本人だけの話ではない
そしてもうひとつ、数字には表れてこない視点があります。
それは、本人が健康であっても、家族や大切な人の病気・障害と向き合う立場になる人がとても多いということです。
子どもの障害や病気、親の介護、パートナーの闘病のサポート。
当事者としてではなく、支える側として病気や障害と関わる時間は、多くの人の人生のどこかに存在しているのではないかと思います。
みんな、何かと闘っている
がんと向き合う人、糖尿病とうまく付き合っている人、心の不調を抱えながら働いている人、家族の介護をしている人、慢性的な痛みを何十年も我慢している人。
街ですれ違う人たちの多くが実は何かしらと向き合いながら日々を過ごしているのだと思うと、診断直後に感じていた「漠然とした孤独感」は少し軽くなり、自分も前向きに頑張ろうという気持ちになってきます。
私の病気(家族性地中海熱)が珍しいのは事実ですが、少なくとも「何かと闘いながら生きている」という点では決して特別なことではないのだと実感しました。
おわりに
こうした数字を見ることで、発作の不安や通院の負担が軽くなるわけではありません。
それでも、これを読んでくださっている方の心にある「なぜ自分だけが…」という孤独感が少しでも軽くなってくれたら嬉しいです。
当ブログは家族性地中海熱(FMF)の当事者である私の実体験をもとに、検査や治療の記録、医療費助成の申請や更新、療養に役立つトピックなどを発信しています。体調の悪くないときに、ぜひ他の記事も読んでいっていただければ幸いです。



