遺伝子検査で異常がなければ、家族性地中海熱(FMF)は否定されるのでしょうか?
私の場合、検査結果は「異常なし」でしたが最終的に臨床的FMF典型例として診断されました。
診断基準は満たしているはずなのに「疑い」のまま様子見が続く。
そんな不安な日々を乗り越え、確定診断に至るまでの実体験をまとめました。
この記録がひとつの実例として、今まさに不安の中にいる方や周期性発作に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
※本記事は個人の体験談であり、医学的助言を目的とするものではありません。
いざ大学病院へ
地域の病院で紹介状を書いてもらい、大学病院を受診しました。
初回受診時にまず行われたのは、発熱の原因となり得る疾患を除外するための検査です。
胸部レントゲンを撮影し、その後の血液検査では、
- 免疫
- 自己抗体
- 甲状腺機能
- 膠原病
- 結核
- HIV・HCV
など、幅広い項目が確認されました。
この日の支払いは3割負担で15,560円でした。点数は合計5,187点です。
あらためて診療明細を見返して特に高額だったのが結核(593点)、自己抗体(490点)、甲状腺機能(248点)、そして他医撮影写真診断(450点)でした。これは「他の病院で撮影したCTやMRI画像を確認した」というものです。
コルヒチン開始
検査の結果は全て陰性。
地域の病院で行った造影CTや血液培養なども含め、「これ以上調べるところはない」というほど検査をしても病気は見つかりませんでした。
そして、いよいよ「FMF疑い」としてコルヒチンの内服が開始されました。
少量からスタートし、副作用とのバランスを見ながら用量を調整した結果、発作時に高熱が出る頻度は明らかに減少。
しかしその他の症状についてはあまり変化はなく、「高熱が出ないだけ」の発作が続きました。
遺伝子検査の結果
これまでの経過やコルヒチンの反応を踏まえ、MEFV遺伝子解析が実施されました。
「これでやっとはっきりする」と期待して受けた遺伝子検査。
しかし結果は「検査範囲において異常なし」
正直、この結果を見たときは今後の不安で頭がいっぱいになりました。
「じゃあ、この苦しみは何?」
「やっぱりただの体調不良として片付けられてしまうの?」
という、振り出しに戻るような絶望感を感じました。
しかし厚労省のページや自己炎症性疾患の診療ガイドライン、臨床調査個人票の診断基準などを確認してみると、FMFの診断において遺伝子変異は必須条件ではないことがわかりました。
FMFの診断基準
臨床的FMF典型例は、以下の 必須項目(a〜cすべて)+補助項目のいずれか1項目以上 を満たすことで診断されます。
必須項目
a. 12〜72時間続く38℃以上の高熱を3回以上繰り返す
b. 発熱時にCRPや血清アミロイドA(SAA)など炎症所見の著明な上昇を認める
c. 発作間欠期には上記a・bが消失する
補助項目
- 発熱時に以下のいずれかを伴う
・非限局性腹膜炎による腹痛
・胸膜炎による胸背部痛
・関節炎
・心膜炎
・精巣漿膜炎
・髄膜炎による頭痛 - コルヒチンの予防内服によって発作が消失あるいは軽減する
参考:自己炎症性疾患診療ガイドライン
※専門的な内容ですが、詳しい診断基準や視覚的に理解しやすいフローチャートなど参考になりました。
基準を満たしているのに「疑い」のまま
私の場合、
- 必須項目 a〜c すべて該当
- 補助項目 2項目とも該当
診断基準上は、すでに「臨床的FMF典型例」に該当していました。
しかし、遺伝子検査が陰性だったこともあり、診断は「FMF疑い」のまま経過観察が続きました。
条件は揃っているはずなのに診断がつかない。
やり場のない気持ちと、前回の受診から2ヶ月分の不安とともに大学病院へ向かいますが、

その後、調子はどうですか?

特に変わらず、毎月発作があります。

そうですか。じゃあまた2ヶ月後。お大事に。
このように、2ヶ月に一度の定期受診は1分で終わります。
これまでにあらゆる検査をしてきて、これ以上できる検査や他の治療も無いのに、いったい何を様子見するんだろう?
様子見っていつまで?
もしかしてこのまま一生「様子見」で終わるの?
こうした不安が日々積み重なっていきました。
元の病院での再評価と確定診断
大学病院でこれ以上の検査や治療の予定がないことを確認し、地域の病院へ戻りました。
そして紹介状に同封された検査データの確認、発作の経過や炎症反応の推移、コルヒチンの反応などをあらためて整理し、診断基準と照らし合わせたうえで、
臨床的FMF典型例
と診断されました。
発症から診断まで、1年4ヶ月でした。
診断はゴールではない
診断がついたとき、まず感じたのは安心でした。
長かった「原因不明」との戦いがようやく終わったという達成感もありました。
ただ、時間が経つにつれて「難病」「治らない」「一生通院」などという現実も少しずつ実感するようになりました。
診断はゴールではありません。
そこからが本当のスタートです。
それでも、原因がわからないまま不安の中にいることと、名前のついた病気と向き合うことは、気持ちの面ではまったく違いました。
おわりに
発症から1年4ヶ月かかってようやく正式に告げられた「家族性地中海熱」という名前。
それは決して嬉しい宣告ではありませんでしたが、少なくとも「正体不明の影」に怯える日々は終わりました。
診断がついたことで私の戦いは「原因探し」から「炎症のコントロール」へとフェーズが変わり、
- コルヒチンとどう付き合うか
- SAAをいかに低く保つか
- 難病を抱えながら、どう日常を楽しむか
ということを日々考えています。
診断はあくまでスタート地点ですが、家族性地中海熱は希少疾患ゆえに、このスタートまで辿り着くのに時間がかかるケースも多いと聞きます。
もし今、症状はあるのに診断がつかずに悩んでいる方がいれば、この記事が一つの事例として参考になれば幸いです。






