赤い四角に白い十字とハートのマーク。
電車の優先席などで見かけるようになった「ヘルプマーク」は、外見からはわかりにくい障害や疾患を抱える人が、周囲に配慮を求めるためのシンボルです。
私自身、家族性地中海熱(FMF)という難病と診断されるまではあまり意識していませんでしたが、いざ診断されてみるといろいろと気になることがありました。
「FMF患者はつけていいの?」
「そもそも、どんな人が対象のマークなの?」
「あれって国の制度?自治体がやってるの?」
そして調べていくうちに、このマークをめぐる社会問題にも行き当たりました。
この記事では、ヘルプマークの制度的な目的を整理しながら、難病の当事者として感じたことや私自身の利用状況などについてまとめました。
ヘルプマークを使ってもいいのか悩んでいる方などの参考になれば幸いです。
※本記事は執筆時点(2026年5月)での情報をもとに記載しています。最新の制度や情報についてはお住まいの自治体のホームページなどでご確認ください。
結論:この記事でわかること
この記事の内容をまとめると、次のようになります。
- ヘルプマークは東京都が2012年に作成し、現在は全都道府県に普及している制度で、対象者に「難病の方」と明記されている
- FMFは厚生労働省の指定難病に認定されており、制度上ヘルプマークの対象に該当する
- 「見た目でわからない」からこそ必要なマークが、目的外の使われ方によって本当に必要な人が使いづらくなるという問題が生じている
- 私自身は、現在はコルヒチンで症状がある程度落ち着いており、公共交通機関を利用する機会もほとんどないため、現時点では取得していない
それでは、まずは制度の成り立ちや目的から確認していきましょう。
ヘルプマークとは:制度の目的をあらためて確認する
ヘルプマークは2012年10月に東京都が作成・導入したマークで、当初は都営地下鉄での配布からスタートし、現在は全都道府県に普及しています。
制度の主旨は、「外見からはわからない」を可視化すること。
東京都のガイドライン(ヘルプマーク作成・活用ガイドラインVer.6、令和5年7月)には、次のように記されています。

義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方がいます。そうした方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助が得やすくなるよう作成したマークです。
また、2017年にはJIS規格(JISZ8210)に追加され、全国的に統一されたマークとして普及しています。
具体的な使用イメージ
例えば、駅のホームなどで「ぱっと見たところ健康そうに見える人」が急にその場に座り込んだり、不自然な場所に座っているのを見かけたとき。
周囲の人には「歩き疲れたのかな」「酔っぱらっているのかな」と思われるかもしれません。
しかし、その人がヘルプマークをつけていたら、一目で「サポートが必要かもしれない」と判断できます。
緊急時には声を出すこと自体が難しい場合もあります。そうした場面でも、マークがあるだけで周囲が動きやすくなる。それがヘルプマークの力だと思います。
配布対象者と入手方法
次に、対象となる方の例と入手方法についてです。
対象者に「難病」は明記されている
東京都福祉局の公式情報によると、ヘルプマークの対象者は次のとおりです。
| 対象の例 | 主な状況 |
|---|---|
| 義足・人工関節を使用している方 | 外見では動きに問題がないように見える場合など |
| 内部障害・難病の方 | 臓器の障害、指定難病など |
| 妊娠初期の方 | 見た目ではわかりにくい時期など |
| 精神疾患・知的障害をお持ちの方 | 状況によって支援が必要な場合 |
重要なのは、東京都は「身体機能等に特に基準を設けているわけではない」と明言している点です。
そして、難病の方も明確な対象として位置づけられています。
※妊娠している方については、マタニティーマークというものもあります。
入手方法と注意点
ヘルプマークは原則として自治体の窓口で無料配布されています。
東京都内では都営地下鉄の各駅事務室、都立病院、東京都心身障害者福祉センターなどで受け取ることができます。都外にお住まいの方は、各自治体の障害福祉窓口が対応していることが多いため、まずは自治体のウェブサイトでご確認ください。
なお、配布時に障害者手帳や診断書などの提示は不要で、申し出るだけで受け取れる仕組みになっています。
最近ではメルカリなどのフリマアプリで売られていることも多いですが、公式の配布窓口で受け取ることが本来の趣旨に沿った利用方法といえます。
「見た目でわからない」がまさに問題の本質
私は家族性地中海熱(FMF)を発症したことで、「見た目でわからない病気」のしんどさを身をもって経験しました。

FMFの発作は39〜40度の高熱に加え、腹痛や胸痛、関節痛などが重なります。発作のない時期は普通に生活できていても、「いつまた来るかわからない」という緊張感は常にあります。
私の場合、3~4週間に一度の周期的な発作を繰り返しながら、それでも外見上はまったく普通に見える。周囲からは「元気そう」と思われるかもしれませんが、当事者の内側では別の話が続いているのです。
これはFMFに限った話ではありません。内部疾患や精神疾患、慢性疼痛など、ぱっと見ではわからない負荷を抱えた人はたくさんいます。
ヘルプマークが生まれた背景には、まさにこの問題があります。
外見では判断できないからこそ、見えるサインが必要だった。その意味では、制度の本質はFMFのような疾患と深く合致していると感じます。
一方で広がる「本来の目的とは異なる使われ方」
ヘルプマークの普及が進むなかで、制度の本来の目的とは異なる使われ方についての報道やSNS上の声も目にするようになりました。
こうした声はSNS上でたびたび話題になっています。
これを見て私が感じたのは、このような使われ方が広まれば、実際に配慮や支援を必要としている人が「信じてもらえない」「後ろめたさを感じる」という状況につながりかねない、ということです。
難病や内部疾患を持つ人は、もともと「見た目ではわかってもらえない」ことに苦労し、生きづらさを感じています。
そこに上記のような「目的外利用」のイメージが重なると、必要な人がマークをつけることへの心理的なハードルがさらに上がってしまう。それは制度として本末転倒です。
FMFの患者はヘルプマークをつけていいのか
結論から言うと、FMFの患者はヘルプマークをつけていいことがガイドラインの記載から確認できます。
東京都のガイドラインには「難病の方」が対象として明記されており、FMFは厚生労働省の指定難病に認定されています。制度の定義上、対象に該当することは明らかです。
FMFの発作には高熱・腹痛・関節痛・胸痛などの症状があり、これらは多くの場合、予兆なく突然あらわれます。この病気と何年も付き合っていても発作のタイミングは予測しにくく、外出先で急に動けなくなることもあり得ます。
こうした状況も、ヘルプマークが想定する「援助や配慮を必要としている」状態に含まれると考えられますし、そのような場面で周囲に「配慮が必要な状態である」ことを伝えられるのは大きなメリットであると言えます。
私がヘルプマークをつけていない理由
一方で、私自身は現時点でヘルプマークを所持していません。
理由は単純で、現在はコルヒチン(FMFの治療薬)の服用によって症状がある程度落ち着いており、公共交通機関を利用する機会もほとんどないからです。
発作が完全に消失しているわけではありませんが、高熱の頻度は以前に比べて明らかに減少していますし、その他の症状も「辛いけれど、頑張れば動ける」ような状態です。
また、日々の移動は自家用車が99%で、公共交通機関を利用することは一年に一回か二回程度しかなく、日常生活の中でマークの必要性を感じる場面は今のところありません。
ただ、これはあくまで「今の私の状況」の話で、今後症状が悪化したり、電車やバスに乗る機会が増えたときには取得を検討しようと思っています。
コルヒチンが効きにくい方、発作の頻度が高い方、通勤・通学などで公共交通機関を頻繁に使う方にとっては、ヘルプマークは十分に意味のあるものだと思います。
ヘルプマーク以外の選択肢
自治体が配布する赤いヘルプマーク以外にも、障害や内部疾患などがあることを周囲にお知らせするためのグッズがたくさん販売されています。
やさしいタッチのイラストやかわいい猫のデザインなどもあるので手に取りやすいかもしれません。
また、クリップ式だけでなく缶バッジタイプやキーホルダーなど種類も豊富なので、使い方に合わせて選ぶことができます。
視覚・聴覚・知的・身体・内部障害など、ご自身の状況や個性に合ったものが見つかると思いますので、是非一度チェックしてみてください。
まとめ
難病の当事者になってはじめて、こういった制度をちゃんと調べるようになりました。
ヘルプマークの意味を知っているのとそうでないのとでは、他者への配慮の仕方も自然と変わってくるものだと思っています。
自分が実際に使うかどうかを判断するためにも、まずはひとつの情報として知ったうえで、それぞれの生活環境や症状などに合わせて制度を正しく活用することが大切だと感じています。
この記事が、同じように悩んでいる方の参考になれば幸いです。
※本記事は執筆時点(2026年5月)での情報をもとに記載しています。最新の制度や情報についてはお住まいの自治体のホームページなどでご確認ください。

