日本に数百人しかいないとされる希少疾患「家族性地中海熱(FMF)」と診断されたことをきっかけに、私は30代で「終活」を始めました。
「人はいつか死ぬ」
「いつ、何が起きるかわからない」
という言葉をどこか遠いもののように感じていた以前とは違い、突然訪れる日常の変化を身をもって体感したからです。
といっても、今すぐ命に関わるような状態ではありません。症状も落ち着いていて、ある程度普通の日常生活を送れています。
しかし、30代という若さで身の回りを整え始めた理由は、単なる備えだけではありません。
この記事では、病気をきっかけに私が実際に手放したものや、整理を進める中で気づいた「今を心地よく生きるための工夫」を記録としてまとめました。
病気になって実感した「日常の脆さ」
病気になる前は、平和な毎日が続くことを疑いもしませんでした。
しかし、原因不明の体調不良が続き、最終的に数十万人に一人という確率の病気を引き当てたとき、「いつ、何が起きるかわからないというのは本当なんだ」と痛感しました。
幸い、現在は症状も落ち着いており、日常生活をある程度普通に送ることができています。
それでも、「いつか」が「明日」になるかもしれないという感覚を持ったことで、自分がこの先事故や病気で動けなくなったり、長期入院になったり、死んでしまったときのことを現実的に考えるようになりました。
「家族への負担」を減らすために整理を始める
もし自分がこの先、突然の事態に見舞われたら、目の前にあるたくさんの物たちはどうなるのか。
真っ先に浮かんだのは、家族が悲しみの中で私の遺品を一つひとつ片付けていく光景でした。
それは決して楽しい時間ではなく、落ち込んだ気持ちを整理しながらの辛い作業になるはずです。
「元気なうちに、身の回りを整えておきたい」
そう思ったことが、整理を始める大きな原動力になりました。
また、今のうちから少しずつ整えておくことは、周りの人の負担を減らすことだけでなく、将来の「弱った自分」のためにもなると感じています。
実際に手放してきたもの
大げさな終活ではなく、自分ができる範囲でコツコツと始めた「身の回りの片付け」の具体例をご紹介します。
① まずはシンプルに全体の物量を減らす
例えば、入院時などに家族に物を持ってきてもらうことをイメージし、どこに何があるか一目でわかる(口頭で説明できる)状態を目指しました。
また、私が去ったあとに部屋に入った家族が絶望しないよう、全体的な量を絞っています。
② 衣類を厳選し、お気に入りだけ残す
処分に手間がかかる布ものは、早めに整理しました。
しばらく着ていない服や、今の自分の好みで「これを着て出かけたい」と思えない服は手放し、お気に入りだけを残すことに。
全体数が減ったことで普段の管理も楽になりましたし、お気に入りの服の登場回数が増えて外出が楽しくなりました。
③ かつての趣味を手放す
過去に集めていたコレクションなど、「今後も本当に手元に置いておきたいか」を自問自答しました。
現在進行形の趣味まで手放す必要はありませんが、昔好きで集めたものなどは思い入れや愛着もありますので、自分の手で「価値をわかってくれる人」に譲ったほうが、手放した後も納得感があります。
フリマアプリで出品してみると思いもよらぬ値段が付くこともあったりして、そのお金を「今の暮らしを整える資金」にするなど、とても良い循環だったと感じています。
④ 本やCDなど「重いもの」を処分する
こういった重量物は処分が大変なので、資源ごみの日に少しずつ出したり、車に積んでリサイクルショップへ持ち込んだりして、家族に苦労をかけないよう意識的に減らしました。
実際に自分でやってみてもかなりの重労働だったので、家族がやるとなるともっと大変だと思います。
処分方法ごとの比較表は以下の通りです。
| 処分方法 | 向いているもの | 手間 |
|---|---|---|
| 資源ごみ | 本・雑誌・段ボール | 少ない(曜日に合わせて出すだけ) |
| リサイクルショップ持ち込み | CD・本・家電 | 中程度(車があれば楽) |
| フリマアプリ(メルカリ等) | コレクション・状態の良い服 | 多い(が、値段がつきやすい) |
| 宅配買取 | CD・本・ゲーム | 少ない(業者に来てもらうか、箱に詰めて送るだけ) |
CDはデータとしてPCなどに取り込んでおけばいつでも聞くことができますし、最近ではストリーミングサービスで大抵のものは揃っています。
本はまた読みたくなったら電子書籍などで買うことができますし、フリマアプリや古本屋で安く買うこともできます。
再入手が困難なことが予想されるものだけ残し、思い切って処分することで、身軽になったのを実感できました。
物理的なモノ以外で進めていること
形のある物だけでなく、家族が困りそうな「目に見えないもの」の整理も少しずつ進めています。
- 使っていない銀行口座の解約
- 保険や投資などの重要書類を一か所にまとめる
- クレジットカードを厳選して解約
- 不要なサブスクリプション(月額課金)の解約
こうした手続き関係は、健康なときでないと腰が上がらないものです。今のうちに進めておくことで、いざという時に家族を困らせる要素を減らすだけでなく、管理の手間や時間など日々の負担もスッキリ整理されました。
現代社会においてはデジタル面の整理も必須と言えるでしょう。SNSアカウントやブログ、クラウドに保存した写真データなど、自分がいなくなった後も残り続けるものは意外と多いものです。
パスワードの管理方法や、アカウントをどうしてほしいかを家族に伝えておくことも、現代ならではの「身の回りの整理」の一つだと感じています。
整理を始めて変わった「物の選び方」
生活を整理し始めてから、買い物の基準も変わりました。
| 整理前 | 整理後 | |
|---|---|---|
| 買い物の基準 | 気に入ったらとりあえず買う | 「処分するとき困らないか」「本当に必要か」を考えてから買う |
| 衣類 | セールで季節外の服を買ったり、色違いや似たような服もつい買ってしまう | 値段が高くてもいいから、長く着れそうな服を厳選して買う |
| 趣味 | 揃えることや保有すること自体に価値を感じ、物が増えていく | 物ではなく「体験」に時間とお金をかける |
| 書類・契約 | ポイントなどにつられて契約したカードや口座が散在 | 解約の手間を考え、今あるもので代用・併用できないか考える |
何かを新しく手に入れるとき、「これ、もし自分がいなくなったらどうなるだろう」と一度考えるようになったのです。
その結果、処分が大変そうなものや、管理に手間がかかるものは自然と選ばなくなりました。
また、今持っているもので代用・併用できないかを考え、「迷ったら一旦買わないでおく」とすることで、無駄遣いや衝動買いを抑制し、結果的に「質の良いものに囲まれる暮らし」にシフトしています。
「減らす=生活レベルを下げる」ではない
こうして物を減らしていくことは、単なるミニマリズムではなく、
- 管理コスト
- 家族の負担
- 自分の体力
- 将来への備え
など、病気をきっかけに“今を生きる感覚”が強くなったからこその「暮らしのアップデート」と捉えています。
減らす・捨てる・買わないなどと聞くと、どうしてもネガティブな印象になりがちですが、あくまでも日々の生活を向上させるためのポジティブなイベントです。
まとめ
私にとっての「終活」は、重苦しい儀式ではなく、「今と未来の生活を整えること」です。
早いうちから身軽になっておくことで、掃除が楽になったり管理の手間が減ったりと、現在の自分にとっての暮らしやすさも向上しました。
また、発作で体調が優れない日でも、片付いた部屋にいると不思議と気持ちが乱れにくいという実感もあります。
病気になったことをきっかけに、これまではどこか他人事のように感じていた死や別れといったテーマが少しだけ身近になりました。
これからも、無理のない範囲で、穏やかに過ごすための「生活の整理」を続けていこうと思います。
皆さんも、まずは引き出し一つ、口座一つなど、簡単な整理から始めてみてください。
このブログでは、こうした暮らしの工夫のほか、家族性地中海熱(FMF)の検査や治療、医療費についても詳しく記録しています。もし同じような境遇の方がいれば、他の記事もぜひ参考にしてみてください。


