持病がある私たちにとっての「防災」
私は「家族性地中海熱(FMF)」という指定難病を抱えており、炎症を抑えるための薬(コルヒチン)を毎日欠かさず服用しています。
持病がある人にとって、緊急時の最大の不安は「薬がなくなること」ではないでしょうか。
食料や水はもちろん大切ですが、私たちにとっては、たった一錠の薬が明日の体調を、そして命を左右することにもなります。
「もし今日、電車が止まって家に帰れなくなったら?」
「災害で流通がストップして薬が手に入らなくなったら?」
大きな災害に限らず、緊急時への不安が常に頭の片隅にある方も多いと思います。
今回は、私が実際に行っている「無理のない、でも確実な備え」についてご紹介します。
これは特定の病気だけでなく、毎日お薬を飲んでいるすべての方に共通する生存戦略です。
外出先での「想定外」に備える[2日分]
仕事で帰れなくなった、終電がなくなった、事故で立ち往生、天候不良で飛行機が飛ばなくなって帰れない・・・等、想定外のトラブルがいつ起こるかわかりません。
このような「急に家に帰れなくなった」時のために、私は常に2日分の薬をカバンに入れています。
2日の猶予があればほとんどの場合、自宅に帰るか、出先だとしても医療機関を受診できるという想定です。
たった2日分ですが、これがあるだけで「もしもの時」のパニックを回避することができます。

こんな感じで、百均の小さい透明ケースに入れてバッグに常備しています。私の持病(FMF)は発熱や関節痛などもあるので、ロキソニンも併せて持ち歩いています。
自宅には災害時に備える[14日分]
家での備蓄については、私は常に「14日分(2週間分)」のストックを確保するようにしています。
「14日」という数字の根拠
大規模な災害が発生した際、最初の3日は人命救助、1週間で避難所整備、そしてライフラインや物流の復旧には2週間ぐらいかかると言われています。この間を不安なく過ごすための量として計算しています。
運用は「ローリングストック」で
特別な「非常用袋」にしまい込むのではなく、新しい薬をもらったら予備に回し、古いものから使っていくスタイルです。薬の定位置を決めておかないと「どこに」「何日分」保管してあるのかを管理するのが大変になってしまいます。
保管時の注意点
災害用の防災バッグなどに入れっぱなしにしておくと、夏の高温多湿などで薬が劣化(変色・変質)することがあります。また、包装から出して直接ピルケースなどに保管する方もいると思いますが、劣化しやすくなってしまうため一時的な使用に止め、長期間の保管はお勧めできません。
薬が一錠ずつ入っているプラスチックのシート(PTPシート)は、実は湿気や光から薬を守る優秀なバリアです。予備をカバンに入れておく際も、シートから出さずに持ち歩きましょう。
薬の使用期限については、一般的には以下の表のようになっています。
| 薬のタイプ | 使用期限の目安 | 備考 |
| 錠剤・カプセル | 6ヶ月 〜 1年 | シート(PTP)に入った状態なら比較的安定。 |
| 粉薬(散剤) | 3ヶ月 〜 6ヶ月 | 湿気を吸いやすいため、変色に注意。 |
| 塗り薬(軟膏) | 6ヶ月 | チューブから直接指で取ると菌が入りやすい。 |
| 目薬 | 1ヶ月 | 開封後は雑菌が繁殖しやすい。 |
| シロップ剤 | 1週間 〜 2週間 | 水で薄めたものは保存がききません。 |
【実録】主治医に「予備の薬が欲しい」と伝えた時の話
多くの人が悩むのが、先生に「予備の薬をください」と言っていいのだろうか?という点ですよね。私も最初は少し勇気がいりましたが、思い切って正直に相談してみました。
私が実際に主治医に伝えた言葉
「次の予約までの日数分ピッタリの薬しかないと、例えば予約日に発作で来れなくなってしまったり、飲もうとした時にポロっと落としてしまったり、特に災害などの緊急時を考えると不安なので、少し多めに欲しいんです」
この一言を伝えたところ、主治医は二つ返事で「そうですよね、じゃあ多めに出しましょうか」とOKしてくれました。
FMF患者のコルヒチンのように、毎日の服薬が症状や発作に直結するような疾病の場合、患者の「自分のリスクを自分で管理しようとしている」という姿勢を否定されることは考えにくいと思います。
キッチンで薬を飲もうとして濡れたシンクに落としたり、冷蔵庫の下に転がったりといった「日常のハプニング」や、もしもの時の「災害への備え」などを具体的に伝えることで、スムーズに協力してもらえるはずです。
デジタル時代の「最強のバックアップ」
防災術を調べると「お薬手帳を持ち歩こう」「ヘルプカードを作ろう」といったアドバイスが並びますが、正直、私はどちらも持ち歩いていません。
完璧な防災を目指して疲れてしまうより、私は「これだけはやる」というポイントに絞って対策しています。
マイナンバーカードの活用
最近ではマイナ保険証の利用が進んでいますが、これが緊急時にも役立ちます。

- 万が一、薬や手帳などを持っていなくても、マイナポータル(アプリ)には過去の処方履歴が記録されている。
- マイナンバーカードさえあれば(災害時特例ならマイナカードすら持っていなくても)避難先の医療機関や薬局で過去の薬のデータを確認してもらえる仕組みがある。
「紙の手帳を持ち歩くのは面倒」という私のようなタイプにとって、カード一枚(あるいはスマホ内)がデジタル版のお薬手帳になってくれるのは、非常に心強い備えです。
大事なのは「情報のバックアップ」
自分が飲んでいる薬の「正確な名前」と「何の病気で、何のために飲んでいるか」さえ即座に言えれば、最悪の事態は防げます。処方箋や、薬局でもらえるお薬手帳用のシールをスマホで撮っておくのもおすすめです。
まとめ:備えがあるから「普通」を生きられる
「持病がある」ということは、それだけで日々の生活に少しの緊張感を強いるものです。
しかし、この記事で書いたように「薬の備蓄」を整えておくだけで、その緊張感はだいぶ軽くなるのではないでしょうか。
防災を考えることは、「普通」の毎日を笑顔で送り続けるための準備だと思っています。
私と同じように毎日欠かさずお薬を飲んでいる方で、もし緊急時のことを考えて不安に感じている方がいれば、次の診察の時に少しだけ勇気を出して、先生に「もしもの時のための予備」を相談してみてください。

この記事が持病と不安なく向き合うヒントになれば幸いです。


