私は家族性地中海熱(FMF)という持病があり、2ヶ月に一度の定期通院をしています。
通院のたびにどんどん増えていく血液検査の記録ですが、持病がある私たちにとって、検査結果は単なる数字の羅列ではありません。
後から振り返ることで、「その時、体の中で何が起こっていたのか」を数字で可視化してくれる大切な指標です。
この記事では、私が経験した「CRP 9.19」という発作時のデータと、現在の安定した数値について、実際の検査結果を交えて紹介します。
この極端な落差を客観的に見ることで、同じように数値の乱高下に悩む方が、自分の体調を把握するひとつのヒントになれば幸いです。
※本記事は筆者の実体験をまとめたものです。医学的助言を目的とするものではありません。症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
【CRP 9.19】40℃超えの発熱から約30時間後
これは私が初めてFMFの発作を経験した時の記録です。
- 1日目:
早朝、突如40.3℃の高熱。
腹痛、頭痛、倦怠感、関節痛が襲う。 - 2日目(午前):
病院で採血。
この時の数値が以下の通りです。
| 項目 | 数値 | 基準値 | 判定 |
| CRP定量 | 9.19 mg/dL | 0.30 未満 | 高度陽性 |
| 白血球数 (WBC) | 12,060 /μL | 3,500〜9,700 | 有意な上昇 |
当時は数値の意味をわかっておらず後から知ったのですが、この時の「CRP 9.19」は、中〜重度の細菌感染症(肺炎、腎盂腎炎、敗血症など)や大きな手術後、重度の外傷、心筋梗塞、悪性腫瘍の進行などでみられる数値で、10を超えると非常に重篤な状態とみなされる深刻なラインだということです。
また、CRPは熱が出た瞬間ではなく、約24〜48時間遅れてピークに達するといわれています。
つまり、採血時に熱が下がり始めていても数値が高いのは、体が必死に火を消そうとした「戦いの痕跡」が遅れて血液に現れているということです。
その後、発作3日目の夜には平熱に戻り一回目の発作は終わりました。(倦怠感が数日間残りました)

【CRP 0.01以下】嵐のあとの静けさ
次に、コルヒチンを服用し、コントロールがうまくいっている現在のデータです。
| 項目 | 数値 | 基準値 | 判定 |
| CRP定量 | 0.01 mg/dL 以下 | 0.30 未満 | 基準値内 |
| 白血球数 (WBC) | 4,760 〜 6,750 /μL | 3,500〜9,700 | 基準値内 |
発作時の「9.19」 と比較すると、平常時の「0.01以下」 という数字がいかにクリーンであるかがわかります。その差は900倍以上です。
こうした極端な数値の乱高下を振り返ると、FMF(家族性地中海熱)という炎症が周期的に繰り返される疾患の性質が、血液データにも顕著に表れているのだと感じます。
平常時にこれだけ低い数値を維持できていることは、今の自分にとって治療(コルヒチン)がうまく機能しているひとつの目安になり、精神的な安心感にもつながっています。

高い炎症値が必ずしも「細菌感染」とは限らない理由
ここで私自身の経験からお伝えしたいのが、血液データの「数字」だけで体調の原因を判断することの難しさです。
一般的に、CRPやWBC(白血球数)がこれほど急激に上昇している場合、まずは「細菌感染症」の可能性が検討されることが多いようです。そのため、私自身の過去の経験(3回目の発作記録)でもそうであったように、まずは感染症を叩くための抗菌薬(抗生物質)が処方されるケースもあります。
ところがFMF(家族性地中海熱)の場合、この激しい数値の上昇は細菌などの外敵によるものではなく、原因はあくまで自分自身の免疫システムが過剰に反応してしまう「自己炎症」の状態にあるため、抗菌薬が効く性質の熱ではありません。
- FMFの場合:
抗生剤を飲んでも飲まなくても、数日で火は勝手に消える(自然軽快) - 誤解のリスク:
たまたま熱が下がるタイミングで抗菌薬を飲み始めると「薬が効いたから熱が下がった」と解釈されることがあり、結果として本来の原因の特定に時間がかかってしまうことが考えられます。
自分の「発作時の数値パターン」を客観的に把握し、それを診察時に共有することは、スムーズな診断や適切な治療に繋げるための一つの大切なステップになるのではないかと感じています。

自分の感覚と数値の答え合わせ
高熱や激しい関節痛に耐えている最中、検査をしても「原因不明」と言われ続けると、「自分の根性が足りないだけではないか」と、つい自分を責めてしまいそうになる瞬間もありました。
しかし、あらためて血液検査の数字を眺めたとき、どこか救われたような、妙に納得した気持ちになったのを覚えています。
「あの時の辛さは、体が必死に戦っていた証拠だったんだ」
と、これほど劇的な数値の上昇を目の当たりにして、自分の感覚を客観的に肯定できたからです。
逆に、平常時の「0.01以下」というクリーンな数字を見ることで「一時的な上昇はあっても、自分の体がきちんと元に戻してくれるんだ」という心強さを感じ、次の発作も戦える気持ちが湧いてきました。
主観的な「辛さ」と客観的な「血液データ」、この2つを照らし合わせる習慣がついてからは、体調の波に一喜一憂しすぎるのではなく、「今はこういうフェーズなんだな」と一歩引いて、自分の体と対話できるようになった気がします。
検査結果に書かれている数字を「自分の頑張りの記録」として眺められるようになると、通院の足取りも少しだけ軽くなるかもしれません。
データを知ることは、不安を管理すること
「持病がある」という生活は、いつ来るかわからない発作への不安と隣り合わせです。
しかし、こうして実際の数値を客観的に眺めてみることで、少しだけ冷静に自分の状態を捉えられるようになります。
40℃の熱にうなされている時でも、「今は体の中で9~10くらいの火事が起きているけれど、数日経てば0.01に戻るんだ」という終わりの見える確信を持てることは、メンタルを維持する上でも大きな意味を持ちます。
検査結果の紙をただファイルに綴じるだけでなく、ぜひ自分の「最高値」と「平常値」を比較してみてください。そのデータの蓄積が、自分自身の体調を把握し、主治医と状況を共有するための大切な判断材料になるはずです。
この記事が、乱高下する炎症数値に振り回されている方にとって少しでも心を落ち着ける材料になれば幸いです。

毎日お薬を頑張っている皆さんの血液データが、今日も穏やかな「平常値」であることを願っています。
今回の「CRP」と併せて確認しておきたい「SAA(血清アミロイドA)」についての記事も過去に投稿しています。よろしければ体調の良いときにチェックしてみてください。
WBC(白血球数)についての記事を書きました。WBCで初動を、CRPで規模を、そしてSAAで残り火を確認するという「炎症管理の全体像」について、よろしければ併せてご覧ください。




